本研究では、画像・情景のパタ-ン情報処理における図形の歪み対称性の解析について研究し、従来用いられていたような発見的な方法とはまったく異なる新しい解析方法を開発することができた。この方法は、ボロノイ領域分割とデロ-ネ-三角分割という平面の幾何学的分割規則を利用している。それらにもとづいて図形の中心軸および中心軸に関して対称に位置する2点を識別する原理を見いだし、工学的な応用の可能性を提案することができた。本方法は対称点対を結ぶ線分が交錯せず、安定に利用できる。付加的な処理についても検討した。 開発した方法の概要を以下に示す。単連結図形を多角形で近似し、その頂点の集合について平面のボロノイ領域分割を求める。一方、同じ頂点集合についてデロ-ネ-三角分割を求める。これらは双対である。ある条件のもとでは近似多角形の各辺はデロ-ネ-辺でもある。このとき、多角形の各辺に双対なボロノイ辺を識別することができる。そのようなボロノイ辺でボロノイ辺の全体を図形の内部と外部とに切断し、図形の骨格線を求めることができる。骨格線の要素のボロノイ辺に双対なデロ-ネ-辺は骨格線に関する局所的な対称点対を指す。さらに骨格線から幹だけを抽出すると、大局的な対称軸すなわち中心線が求められる。中心線の要素のボロノイ辺に双対なデロ-ネ-辺は大局的な対称関係にある点対を指す。 研究実施計画のうち、研究開発環境の整備については、UNIXを中心とした小型計算機環境により、プログラムの整理体系化を効率的に進められるようになった。また、処理実験については、頂点数が100点以下の多角形近似に加え、ディジタル輪郭線へも適用して評価を行った。また、歪み対称性の解析結果にもとづいて構成した一般化円筒による立体モデルを陰影表示して、応用可能性のデモンストレ-ションを行うことができた。
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