研究概要 |
前方後円墳の形態変化を統計的に分析するための基礎となるデ-タの整理・点検を主として奈良県について実施した.さらに,奈良県内の主要古墳と親近性のある他地域(福岡県,岡山県,愛媛県その他)の古墳の現状を視察し,実測図と墳丘の現状との対応関係を調査した. これらの結果を総合して,奈良県の最新古墳デ-タをコンピュ-タ(VP30E)に入力してデ-タベ-スの自頼性を高めた. 主成分分析法の導入による古墳の形態分析に関連して,最終的な指数計算式を確定した.すなわち,「型式変化指数」と「胴長指数」の二つであって,前者が古墳の築造年代との強い相関をもつことに着目した年代推定法とその逆推定(年代→形態)の手法をも確立した. 前方後円墳の形状復元を支援する対話型知識システム(エキスパ-トシステム)を構築した.本システムはESRATと名づけられているが,統計的に導かれた上記の二つの指数をはじめとするいくつかの推定式および類型に関する知識がチャ-ト形式,フレ-ムあるいは表形式の形でシステムに埋め込まれて形状復元に有効利用されている. 復元された古墳の3次元映像化を目的とするコンピュ-タグラフィックス用の基礎ソフトウェアを開発・整備した.すなわち,3次元映像化のための形状モデリング法およびレイトレ-シング法を本研究向きに整備し,実験的な映像化環境を確立した. 以上にもとづいて,いくつかの前方後円墳の実例を題材とした復元実験を試みた.具体的には,大阪府羽曳野市の応神天皇陵,奈良市の垂仁天皇陵,神奈川県川崎市の白山古墳などであり,それぞれ満足すべき復元映像が得られた.
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