研究概要 |
1.新しい実験動物の開発のために,食虫目トガリネズミ科ジャコウネズミ属の一種であるジャコウネズミ(実験動物名スンクス)に注目し,地域集団ことのライン育成をおこなっている。このうちで1984年に入手したスリランカ産のもの(SRIライン)は染色体数が30本であり,本邦産の染色体数40本とは異なっていた。そこで我々が1973年依頼育成してきた長崎産(NAGライン)と比較しながら研究を行った。 2.染色体数30を特徴とするSRIラインは灰白色の毛色を呈し,裸出している吻部や尾,四肢の指などの皮膚には色素が少なかった。色素の多いNAGラインとの交配実験ではこの形質は明らかに遺伝性でありその遺伝様式は常染色体性不完全優性を示した。また体のサイズは長崎産のものより大きかった。 3.SRIラインは繁殖成績は悪く,多数回の交配でも妊娠しないものが多く,また妊娠出産しても哺乳せず,食殺するものも多かった。NAGとSRIとの交配ではF1,もどし交配,F2,ともに子が得られ生殖隔離は見られなかった。しかしながらSRI側への戻し交配F2では妊娠しないもの,成長のよくないもの,行動の異常を示すものが多く見られた。 4.SRIラインにおける染色体の減少はNAGラインにおける20のアクロセントリック染色体がロバ-トソン型転座(癒合)によってメタセントリック染色体に変化したもので腕数はともに48で同じであった。SRIラインとNAGラインとの交配群には染色体数2N=30から2N=40までの個体が得られた。SRIラインへもどし交配すると2N=31から34,2N=40へもどし交配すると2N=33から38の個体が得られ,異数染色体を特徴とするラインの育成が可能になった。
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