研究概要 |
動物実験に伴う腎症候性出血熱(HFRS)の要因である汚染動物、特にラット相互間のウイルス伝播様式を明らかにする目的で実験を行った。 1.6〜8週齢時にHFRS V Bー1株を接種し抗体価が1:16384倍に上昇したラットを飼育し経時的に抗体価の変動,Virusの消長を血清検査及び各臓器からのVirus分離を行い検索した。飼育3年経過のラットの脳肺からVirus分離は可能であり,特に脳からは高率の分離できた。HFRS V Bー1株感染ラットは、3年経過後も体内での持続感染の起っている事を認めた。 2.HFRS Virus及びHFRS不活化Vaccine Bー1株接種マウス,ラットの新生仔にVirusを接種し成長を観察した。normal control新生仔は2〜3週で全て死亡したが、抗体保有母親により哺育された新生仔は順調に成育し,母体からの移行抗体が新生仔に接種したVirusの増殖を阻害したと考えられる。 3.Virus及びVaccine接種後6ケ月経過したラットの維持した抗体価と新生仔に移行する経乳汁移行抗体を経時的に測定した。抗体価1:2048を保持した母親が哺育した新生仔の抗IgG抗体は8週齢、IgA抗体は4週齢迄検出したが、抗体価1:256を保有する母親から仔への移行抗体は1〜3週において1:16〜32の低値に留まりIgA抗体は検出されていない。同抗体価を保有するラットの新生仔にVirusを接種し哺育させた。新生仔は3日後より抗体が上昇し,16週齢ではIgG1:4096,IgA1:512の抗体価を示した。この個体の脳肺脾よりVirus分離が可能であった。 新生仔のVirus増殖阻止効果は、母親の維持する抗体価が大きく影響し,母親からの移行抗体が低値で且つ又短期間の場合,新生仔は死亡は免れるがVirusの増殖は阻止されない事が明らかとなった。
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