実験用霊長類は医学領域の研究実験に多く供され、今後ますますその利用は増加するものと思われる.しかし、その動物資源は限りあるものであり、実験の倫理的問題をも含め、動物の有効な利用が一層計られなければならない。本研究は実験用サルとして一般的なカニクイザルに注目し、ヒトを含めたサル類およびその他の哺乳類との間の血漿タンパク質の分子遺伝学的差異を明確にし、また集団レベルでの成長および老化における各種血漿タンパク質の質的、量的血中動態を検討した。対象としてプレアルブミン、アルブミン(Alb)、al酸性糖タンパク、ハプトグロビン(Hp)、ヘモペキシン(Hx)、セルロプラミスミン(Cp)、トランスフェリン(Tf)、α2マクログロブリン(α2M)、フィブリノ-ゲン(Fib)、IgGおよびAなどの分離精製を行った。精製タンパクは家兎に免疫し、大部分で良好な抗血清を得た。これを用いて各種漿タンパク質の血漿中濃度を年齢をおって定量操作した。現在4ないし5歳例を中心としての測定を開始し、対象齢の巾をそれぞれ3もしくは7歳例にまでひろげている。ここではHxがヒトに比べ大幅に少ないことや代ってTfは約倍量を有する、また今回定量を行なった全てのタンパクについて漸減型の傾向が見られた。とくにヒトで漸減型をしめすしいわれるHp、IgGで漸減型の傾向が見られた。さらにHxでの漸減型の傾向はヒトでの日本人で得られた結界と同様のものであった。さらに妊娠期については分娩前後にAlb値が低下すること。また妊娠分娩の全期にわたってHp値の大きな変動が見られた。実験繁殖群個体の各種血漿タンパク質遺伝子座の表現型を観察した。89例の対象に於て、Hpで多型を示す1頭を、Tfでも3頭を見いだした。現在、免疫中で未だ充分な抗体価を示していないα2M、Cp、Fibなどについても、抗血清が得られた段階で測定を開始したい。
|