【1】当該年度も引き続き大学施設並びに実験小動物コロニ-のマウス・ラットを中心としてマウス肺炎ウスルス(PVM)の血清学的調査を続行した。 その結果、我国の大学施設は勿論専門動物業者においてもSPF動物と定義されている動物、特にラットで濃厚なPVM感染の存在が証明され、本ウイルス疾患の重要性が判明するとともに、欧米同様本邦でも本ウイルスを対象とした検査体制整備の必要性が認められた。 【2】本年度新たにPVMウイルス分離の試みが行われた。感染の存在が確定されているコロニ-由来のラットから分離実験を行った結果、PVM様因子(複数)の分離に成功し、“それらの一般性状と特徴"“分離株を使用した感染動物実験"を行った。 その結果、我国で分離したウイルス(代表株名:31N)は標準株(No.15)の一般性状と合致し、同定できた。また、感染動物実験の結果、マウス(免疫正常乃至免疫不全を問わず)で肝片化、充血、さらに組織的に間質性肺炎像を呈した。マウス肺組織中におけるウイルス増殖を定量したところ、免疫正常マウスでは感染10日後で消退したのに比し、免疫不全マウス(ヌ-ドマウス)では少なくとも感染21日後までウイルスを保有し続け、ウイルスキャリャ-としての重要性を示唆した。 また、ラットでも軽微とはいえマウスと同様な組織病理学的所見が得られ、今後ラットを使用した実験動物に対し警鐘を鳴らす結果を得た。これらの成果を踏まえ、今後さらに本ウイルス疾患の本態に迫りたい。
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