研究概要 |
最近、我国のN・katoによって統計的動力学回析理論と名付けられた新しい回析理論が提案された。この理論は従来の運動学理論と動力学理論を包含し、且つ結晶の完全性が中間状態にある場合でも回析現象を説明し得る理論として期待されている。本研究はKato理論の妥当性を、実験的に検証することを目的とするものである。 前年度と同様に、CzーSiをアルゴンガス雰囲気中で加熱し、微小欠陥をランダムに導入したものを試料とした。今年度は特に、加熱温度を950℃に固定し、加熱時間を変えた試料を多数作成して実験を繰り返した。これらについて、エネルギ-分散型X線回析法で、積分反射強度の波長依存性を精密測定した。測定の結果、加熱時間の増加に伴って次の変化が強度曲線に認められた。 1.積分反射強度が増大する。 2.ペンデルビ-トの位置が長波長側に移動する。 3.ビ-トの振幅が減小する。また、これらの変化の大きさは反射指数に依存していた。 得られた強度曲線と理論曲線を比較し、理論の妥当性を検討した。その際、理論に含まれる3つのパラメ-タE(静的デバイウォラ因子)、τ(位相項の相関距離)及びΓ(振幅の相関距離)を変化させ、測定曲線が説明できるかを判定の規準とした。検当に当たり、高指数の反射で顕著になる温度散漫散乱を新たに考慮した。その結果、Γが消衰距離に比例するのではなく、反射指数と結晶の不完全性が決まれば一定であると仮定すると定量的に実験結果が説明でき、理論が妥当であると結論できた。得られたパラメ-タの値の範囲は、Eが1.0〜0.6,τは00.4μm〜4.0μm,Γは0.1〜1.1μmであった。 今後、転位や粒界を含んだ試料についても同様の実験を繰り返し、更に厳密に理論の妥当性を検討する計画である。
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