研究概要 |
平成元年度では、この研究課題の2つの柱,(1)X線異常散乱測定および(2)中性子散乱測定により得られたデ-タの解析を実行し、次のような新たな知見をえた。まずCu^2Seの超イオン導電相でのX線異常散乱測定から得られたデバイライン強度を、説明可能な新たなモデルを提出した。(T.Sakuma et al.Materials Transactions,JIM 30(1989)365)超イオン導電体の構造解析モデルの判定にX線異常散乱法が有効なことがわかった。一方Cu^2Seの中性子散乱でCuイオンによる低エネルギ-励起を観測した。(T.Sakuma and K.Shibata J.Phys.Soc.Jpn 58(1989)3061)他の超イオン導電体との比較から、エネルギ-の値はイオンの質量と関連することを見いだした。 X線異常散乱実験で得られたデ-タのうち、デバイラインおよび散漫散乱の両方を一括して解析しようと試みたが、散漫散乱はその解析法がまだ定着しているとはいえず(short range order parameters を導入する方法ではあまりにもパラメ-タ数が多くなる)、とりあえずデバイラインの解析のみを発表した。散漫散乱の解析には、多量の数値計算を必要(たとえば32ビット計算機で1つのデ-タあたり10日の連続計算)となることがわかった。解析法の改良などで数値計算のウエイトを落す必要がある。 中性子散乱ではデ-タ解析にフオノンの状態密度の影響を差し引くことができれば、目的の低エネルギ-励起のより信頼性のある同定が可能となることがわかった。これまで多数報告されているフオノンの状態密度をどのように数値計算にとりこむかが、これからの問題点である。
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