研究概要 |
この研究課題では、様々な静的構造モデルのうち実際の構造に適合するものはどの構造であるがを判定する方法として、X線異常散乱法を適用すること、また超イオン導電体中の低エルネギ-励起の系統的な理解をめざし、銅イオン導電型超イオン導電体の中性子非弾性散乱測定を行う目的でスタ-トした。X線異常散乱法を適用する物質を探索するすちに、鋼ーハロゲンーカルコゲン系物質の存在を知った。この系の物質のいくつかの室温で無秩序分布をもつが、室温以下の構造および物性測定は全くなされていなかった。低温で銅原子の配列が秩序構造となる予想をもとに、比熱測定およびX線回折測定を行った。この結果、CuBrTe,CuITe,CuITe_2の3種類の物質で比熱の異常およびX線回折スペクトルの変化を見いだした。また合成後ほぼ20年の間構造が未知のままであったCuBrSe_3の構造解析を行い、結晶系、空間群および単位胞中の詳細な原子位置を決定した。CuBrSe_3中の拡散イオンであるCu原子の基本構造は秩序分布を仮定した取扱で十分に回折スペクトルを説明できた。X線異常散乱法をCuBrSe_3に適用しこの仮定の妥当性を検討している。超イオン導電体中の低エネルギ-励起の存在は、これまでカチオン電導型のAg,Naイオン化合物に関して知られていた。研究期間中に一連のCuイオン電導型物質の中性子非弾性散乱の測定を行い、Cuイオン電導型超イオン導電体では分散のない約3.4meVの低エネルギ-励起が存在することを見いだし、カチオン型電導体に共通の拡散イオン種の質量と低エネルギ-励起の値との関係を得た。現在、アニオン電導型超イオン導電体にもこの関係が適用できるかどうか検討中である。
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