1.染色物の光退色におよぼす汗成分の影響 (駒城) 汗成分としてヒスチジン、乳酸を代表として選び、反応染料の水溶液中およびセルロ-ス上での光退色におよぼす影響について、スペクトル変化から検討した。その結果、1)ヒスチジン、乳酸はいずれも励起されて光還元作用をもつ。しかし両者ともその酸化ー還元電位とpHとの関係は類似していることから、それ自体の還元力は大きくなく、光による還元と考えられる。2)アゾ系染料では異性化も起こる。3)ヒスチジンは可視短波長領域に吸収を持つ物質を生成することが変色に関係する。4)アゾ系の非含銅型染料に対しては、乳酸、2ーヒドロキシ酪酸のようなaーヒドロキシカルボン酸が、含銅型染料に対してはヒスチジン、グリシンに共通するアミノ酸構造が光退色に影響を与える。5)アントラキノン系染料は乳酸が存在すると可視光で顕著に退色し、アゾ系染料と大きく異なる。6)セロハンおよび綿布上での光退色は、水溶液系に比較し退色速度はより小さいが、同様の傾向が現われた。 2.繊維物質に対する汗成分の吸着(中島) ガラスカラムにセルロ-スおよびポリアミドの粉末を充填し、1)pH緩衝液を移動相としてヒスチジン、乳酸をそれぞれ別々に注入して“溶出クロマトグラフィ-"を行ない、溶出量から求めた相対的な吸着量は、ヒスチジン/セルロ-ス系では非常に少なく、一方、乳酸/ポリアミドでは、かなりの吸着が観察された。2)一定濃度の汗物質溶液をカラムに流し続け、相互作用により溶出が遅れた量を吸着量とする“前端クロマトグラフィ-"により吸着量を求め、吸着等温線を作成した結果、ヒスチジン/セルロース系、乳酸/ポリアミド系いずれもラングミュア型を示し、これに基づいて計算した吸着熱、吸着エントロピ-変化から、どちらの系も弱い物理的吸着であることが明らかになった。
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