1.目的 豆乳中の脂質の酵素的過酸化反応は豆乳の風味に大きな影響を及ぼす。本研究は豆乳における豆臭成分(ヘキサナ-ル)の前駆物質である脂質過酸化物の挙動について検討した。 2.方法 豆乳(乾燥大豆1g/水15ml)を用いて、種々の条件下(25℃、37℃、塩化第一スズ、クエルセチン、NaOH、エタノ-ル、リノ-ル酸、メチオニン、SDS、DTAC、Tween20、レシチンの添加、無添加)で反応させ、脂質の過酸化度(TBA値、溶在酸素減少量、電気化学検出)とヘキサナ-ル量の変化を調べた。 3.結果、豆乳を加温(25℃、37℃)するとTBA値は10分までに立ち上がり、60分までにプラト-に達した。加温0分でのTBA値は高く、豆乳調製時にリポキシゲナ-ゼの阻害剤(塩化第一スズ、クエルセチン)を添加すると、無添加の豆乳より加温0分でTBA値が著しく低下し、ホモゲナイズ中に酵素作用による過酸化が著しく起こることを示した。豆乳調製時に、エタノ-ル、SDS、DTAC、Tween20、レシチンを添加した場合、無添加の系に比べて、TBA値はエタノ-ル、SDSで増加し、DTACで減少し、Tween20、レシチンの系で変化がなかった。ヘキサナ-ル量は無添加の系に比べて、DTACで増加し、SDSで減少し、エタノ-ルの系で変化がなかった。リノ-ル酸を添加した場合、TBA値とヘキサナ-ル量が減少した。溶存酸素減少量とTBA値とはほぼ相関していた。電気化学的に、HPLCでトリアシ-ルグリセロ-ル(TG)ヒドロペルオキシド量の変化を測定したところ、無添加の系に比べて、エタノ-ル、SDSの系で減少した。以上の結果から、豆乳中のTGは、酵素的過酸化を受けるが、その過酸化物は、遊離脂肪酸の過酸化物の分解径路とは異なった径路で二次生成物に分解されることが推定された。
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