研究概要 |
1.目的 大豆の豆臭成分である揮発性カルボニル化合物(特にヘキサナ-ル)がタンパク質と反応するとタンパク質が損傷を受け機能特性や栄養性にも影響を及ぼす可能性がある。豆乳の系においてこれらの点について十分な検討はなされていない。本研究では、カルボニル化合物との反応による大豆タンパク質の化学変化について検討した。 2.方法 ツルノコ大豆を用いて酸沈タンパク質、llS、7Sグロブリンにおいて、種々の条件で各種アルデヒドと共にインキュベ-トし、反応後、NaBH_4還元または非還元後、タンパク質の変化をアミノ酸分析、及びSDSーPAGEにより分子量の変化を測定した。またモデル系として固型状態及び水溶液状態におけるリゾチ-ムとリノ-ル酸メチル(LM)の混合系を用いて脂質過酸化の初期段階についても調べた。 3.結果 水溶液系でヘキサナ-ルと大豆タンパク質を反応させたところ、タンパク質の重合、アミノ酸残基(Lys,Met,Trp)の損傷がみられた。このうちMet残基はMetOに酸化された。Lys残基はヘキサナ-ルとシッフ塩基を形成し、さらに一部は塩酸加水分解に安定な未知の化合物へと変化した。他の脂肪族アルデヒドを同様に反応させたところ、炭素数の多いアルデヒデほどタンパク質の損傷程度が増大する傾向にあった。また、乳化系における反応は、非乳化系(水溶液系)と同様であった。これらの結果より、豆乳の系においてカルボニル化合物はタンパク質と化学反応し、様々な変化を与えることを明らかにした。リゾチ-ムとLMと系では、貯蔵によってリゾチ-ム分子の二量体等の重合生産物の生成がみられた。この重合は緩衝液中での紫外線照射によっても起こった。しかし、BHTの添加によって重合は起こらなかった。この重合の初期段階ではアミノ基側鎖の寄与が大きい。脂質過酸化物はラジカル反応によりタンパク質に付加し、溶解性及び酵素被分解性を低下させた。
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