研究目的 妊娠ラットに分離大豆タンパク質を10%から50%まで含む食餌を投与し、出産状況を観察した結果、タンパク質35%以下の食餌では出産状況にかなり障害が認められた。そこで分離大豆タンパク質に第一制限アミノ酸であるメチオニン(Met)を添加した場合、タンパク質の利用効率及び母体、出生仔への影響が改善されるか否かを検討する。 研究計画 11週齢のWistar系ラットを無作為に5群に分け、妊娠全期間分離大豆タンパク質含量が20%と30%及び20%にMet0.6%添加、30%にMet0.9%添加、対象として精製全卵タンパク質10%の食餌を投与し、出産状況を観察する。妊娠期間中、糞と尿を採取し窒素量を測定し、妊娠時のNー出納より分離大豆タンパク質の利用効率を算出する。出生仔の体重、臓器重量を計測、肝臓、脳、カ-カスの核酸、タンパク質量を測定する。 結果 対象群では妊娠日数が進むにつれて体重が増加し飼料効率が高くなるのに対し、分離大豆タンパク質群(S)では妊娠末期に摂食量が著しく減少し飼料効率も低下した。S20%レベルでは、Met添加群においても妊娠末期の生物価の低下が著しく、死産が認められ、良好な出産状況が得られなかった。Metの補足効果は出生仔の体重、臓器重量に認められたが対象群には及ばなかった。S20%レベルでMetを添加しても十分に改善されない。S30%レベでは妊娠末期の飼料効率および生物価にMetの補足効果が少しみられ、Met添加群では良好な出産状況が得られた。しかし、母体の体重増加は改善されなかった。出生仔の体重、臓器重量は対象群より軽量であったが、肝臓、脳、カ-カスの核酸量、タンパク質量にはMet補足効果が認められ対象群とはほぼ同程度となった。S30%レベルではMetを0.9%添加することにより、まだ十分とはいえないが補足効果が認められた。
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