研究目的 本研究のこれまでの実験経過より、妊娠ラットに分離大豆タンパク質(SPI)を投与すると、タンパク質35%以下のレベルでは妊娠末期において飼料摂取量が著しく減少し、正常な分娩が出来ない場合や死産が多いことが観察されている。本研究は、妊娠末期の摂食量低下の原因を、この時期の胎盤機能や胎仔の発育を検討することにより、明らかにすることを試みた。 研究計画 精製全卵タンパク質(PEP)10%食を対照とし、SPI20%食、Met0.6%添加したS20+M食(S20、S20+M、両者ともにS群と略記)を妊娠ラットには19日間と20日間、非妊娠ラットには19日間投与し、血清、羊水中の遊離アミノ酸、尿素窒素濃度を測定する。血清中のグルコ-ス、遊離脂肪酸、エストラジオ-ル17β濃度、尿中エストロゲン量を測定する。また胎盤、胎仔肝臓と脳中のタンパク質量と核酸量を定量する。 結果 飼料摂取量は妊娠18日以降、S群で著しく減少し、19日には休重減少が見られた。母体血清中の遊離アミノ酸濃度は妊娠19日、20日共に対照群に比べS群が高い値を示し、血清中尿素窒素濃度は20日にS群で有意に高かった。このことからS群では胎盤におけるアミノ酸の能動輸送能が劣っていると推察される。またS群では血清遊離脂肪酸濃度が有意に低く、グルコ-ス濃度が有意に高くなったことより、妊娠時の糖ー脂肪酸代謝を調節する胎盤性ラクト-ゲンの産生、分泌が劣っていると推察される。胎児ー胎盤機能の指標となる尿中エストロゲンは対照群では19日よりも20日に上昇するのに対し、S群では20日に減少する傾向がみられ、胎児ー胎盤系でのエストロゲン代謝に変動を来していることが示唆された。胎仔肝の発育はS群で劣るが、脳では群間の差はなかった。
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