研究概要 |
研究目的 妊娠ラットに分離大豆タンパク質(SPI)を投与すると、タンパク質含量35%以下においては良好な出産状況が得られなかったことから、SPIの第一制限アミノ酸であるMetを添加することにより、タンパク質の利用効率および母体、出生仔への影響が改善されるか否かを検討した。更にSPI投与による妊娠末期の摂食量低下の原因を、この時期の胎盤機能や胎仔の発育を検討することにより明らかにすることを試みた。 研究計画 精製全卵タンパク質(PEP)10%食を対照とし、SPI20%、30%、35%、40%食および各々にMetを0.6%、0.9%、1.1%、1.2%添加した食餌を投与し、出産状況を観察する。妊娠期間中の窒素出納よりSPIの利用効率を算出する。 一方、SPI20%、SPI20%+Met0.6%食を妊娠ラットには19日間と20日間、非妊娠ラットには19日間投与し、血清、羊水中の遊離アミノ酸、尿素窒素濃度、血清中のグルコ-ス、遊離脂胞酸、エストラジオ-ル17β濃度、尿中エストロゲン量を測定する。また胎盤、胎仔肝臓と脳中のタンパク質量と核酸量を定量する。 結果 対照群では妊娠末期にタンパク質の利用効率が向上するのに対し、SPIでは低くなる傾向があり、出産状況はSPIレベルが低い程死産が多く見られ、40%レベルでも良好とはいえない。Met添加による補足効果はSPI20%レベルではほとんど認められず、SPI30%,35%レベルでは出産状況、妊娠末期のタンパク質の利用の効率などにかなり改善が認められ、SPI40%レベルではほぼ対照群と同程度の栄養効果が得られた。 SPI投与による妊娠末期の摂食量の低下は食餌中のSPI含量を高くすれば緩和されることから、SPI20%レベルでは妊娠末期のタンパク質源としての栄形価に問題があると考えられる。更にSPI摂取による母体の内分泌系や代謝の変動が関与していることが示唆された。
|