頭部は脳の活動のために熱産生量が常に多い。また、その形や表面積が大きいことなどにより熱放散量も多い。そして、寒冷ならびに暑熱環境における帽子による防暑防寒の重要性が昔から言われている。しかし、その生理学的意義について調べたデ-タ-はほとんど見あたらない。そこで、本研究は帽子の温熱生理的意義を明らかにする目的で、帽子着用時と非着用時について衣服気候と帽子内気候並びに生理反応を測定し、被服生理学の立場から検討を加える。 平成元年度には、夏期太陽照射の戸外で帽子着用時と非着用時について、また太陽光線のもとでは衣服の色が白か黒、色が衣服の温熱生理に与える影響が大きいので白色着用時と黒色着用時について、椅座安静の被験者について60分間にわたり心拍数、直腸温、皮膚温、衣服内温、湿度、帽子内温度、帽子表面温を測定するとともに、体重減少量から発汗量を、そしてアンケ-トにより温冷感・快適感を調べた。帽子着用により体への熱負荷が減少することが、心拍数、直腸温の傾向から観察された。また色に関しては、黒色着用時の方が直腸温が低く、発汗量も少ない傾向がみられた。 しかし、台風が多く十分なデ-タ-を得られなかったので、平成2年度は人工気候室内人工放射熱存在下で、脳温の指標として鼓膜温を測定してさらに詳細なデ-タ-を得る予定である。脳温に違いが認められれば、帽子の有無が作業能率に与える影響を見る。 また、平成3年度には、寒冷時について暑熱時と同様の実験を行ない帽子の防寒効果を温熱生理学の立場から解明したい。
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