研究概要 |
寒冷環境に於ける帽子の保温効果を明らかにする目的で,被験者7人に付いて、寒冷暴露中の鼓膜温,直腸温,皮膚温,帽子表面温,並びに寒冷暴露前後の心拍数と作業能率について,帽子着用時と非着用時について調べ,帽子の寒冷環境における生理学的意味を明らかにした。得られた主な知見は,以下の通りである。 1)着帽時の帽子表面温は,無帽時の頭表面温よりも低くなり,帽子表面からの放射・伝導・対流,並びに蒸発による熱放散は,無帽時の頭部表面からの熱放散量よりも少なくなったと推測された。これは、帽子の保温効果のためと考えられ,その結果,着帽時の頭部表面温,前額部皮膚温は無帽時よりも高く保たれた。無帽時に見られた有風時のこれらの部位における皮膚温下降が,着帽時にはほとんど見られなかった。 2)着帽時にも無帽時と同様に耳部が露出されていたにもかかわらず,着帽時の方が無帽時よりも鼓膜温がくなった。これは,頭部表面,顔面からの冷たい静脈血が頭蓋内に流入し,動脈血と対向流熱交換を行い鼓膜温に影響を与えたからと考察した。 3)寒冷刺激による心拍数の低下が無帽時には認められたが,着帽時には認められなかった。 4)これらの事実は,温熱快適感,作業能率にも着帽時に良い影響を与えた。作業能率は与えられた色刺激に応じるまでの時間を測定して調べたが,寒冷暴露後には反応に要する時間が長くなるが,着帽時には無帽時に比べ作業能率低下の程度が少なくなった。
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