研究概要 |
1980年代になって、特に高齢者の腱コラ-ゲンやレンズタンパク質、及び糖尿病や高血圧症等成人病患者の組織中に糖一タンパク質由来の蛍光性縮合物が有意に蓄積していることが報告されている。日本人をはじめ多くの民族に親しまれている茶葉(緑茶、黒茶、紅茶、ウ-ロン茶)について、糖一タンパク質縮合反応(Maillard反応)抑制効果を検定し、併せてその抑制メカニズムを検討した。 Dーグルコ-スとヒト血清アルブミン(HSA)、またはDーグルコ-スとカゼイン(CAS)の中性リン酸緩衝液(pH7.4)に各種茶葉抽出物、あるいは(ー)エピガロカテキンガレ-ト(EGCg)など各種カテキン類を一定量添加したのち、生理的条件下で1ー4ケ月間反応させた。また、Maillard反応の重要な中間体である3ーデオキシ-Dーグルコソン(3DG)や5-ヒドロキシメチルー2ーフルアルデヒド(5HMF)を合成し、これらカルボニル化合物とHSAおよびCASとの反応系についても、同様に茶葉抽出物の蛍光物質の阻割度を蛍光強度(Ex370nm,Em440nm)の測定とSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により調べた。 その結果、いずれの茶葉抽出物およびカテキン類もDーグルコ-スとHSA,CASの反応系におれる蛍光物質の生成を10ー60%阻害した。しかし、3DGあるいはHMFと両タンパク質との反応液中では、茶葉成分はほとんど阻害効果を示さなかった。 これらの結果は、EGCgをはじめタンニン類を含有する茶葉成分が糖ータンパク質縮合反応の主として初期に抗酸化的、ラジカル的に作用して蛍光物質の生成を抑制しているものと思われた。 現在、茶葉抽出物のラットへの投与実験を行っているが、茶葉の飲用がヒトの老化や成人病の発症に対して抑制効果を発現する可能性を示唆する結果を得ることができた。
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