平成元年度は以下の項目について研究を行った。 1.疎水性繊維としてポリエステルを選びフィルム、メッシュスクリ-ン布、織物のアクリル酸による表面グラフト重合を行った。表面改質織物における液体の浸透ぬれを測定し、ぬれ速度の解析から織物における表面自由エネルギ-の変化の様子を明らかにした。 2.表面改質フィルムを用いて種々の表面張力を有する液体による接触角測定を行い表面改質にともなう表面自由エネルギ-の変化を検討した。アクリル酸による表面親水化では、表面自由エネルギ-の増大をもたらすが、分散力成分はグラフト化により影響されることなく一定であり、極性力成分が増大していく事が分かった。 3.全反射赤外分光測定、ESCA測定などによりフィルム、織物の表面分析を行い、グラフト化表面の化学的改質の定量化を表面COOH基の測定を中心に行った。その結果、1で得られた表面自由エネルギ-変化をこられの分光学の結果から定量的に産出する手法を開発する事に成功した。 4.ヘプタフルオロオクチル基を有するアクリレ-ト系ブロックポリマ-によりナイロンの表面改質を行い、接触角測定とESCAによる表面キャラクタリゼ-ションを行った。表面改質により表面自由エネルギ-は大きく低下したが、主として分散力成分(γ_F^d)の低下によるものであった。ESCAにおけるF_<1S>/N_<1S>の強度比および面積比とγ_F^dとの間に直線関係が認められた。 以上の結果をふまえ、平成2年度では、さらに、表面自由エネルギ-変化の及ぼす洗浄性の変化への影響について詳細な検討を行う。
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