高分子電解質及び界面活性剤は種々の染色助剤として広範囲に用いられている。しかしこれらの役割については、種々検討されているが、その詳細については十分明らかでない。本研究はこのような認識のもとに、本年度は、ナイロン及び羊毛の酸性染料による染色に及ぼす界面活性剤の添加効果について検討したところ、次のような知見を得た。 1)染色に及ぼす界面活性剤の添加濃度の影響 界面活性剤として、特に効果が期待できる両性界面活性剤を中心に、ナイロン・羊毛の染着に及ぼす添加剤濃度の影響を、アニオン及びカチオン性界面活性剤の場合と比較検討した。まず、両性界面活性剤として、種々のアルキル鎖の異なるN-アルキルグリシン、及びアルキルベタインを合成した。これら界面活性剤を用い、各pHにてオレンジIIや酸性ミリング染料によるナイロン・羊毛の染色を試み、一定濃度の染料による染色に及ぼす添加剤濃度の影響を調べたところ、アニオン及びカチオン界面活性剤の添加は、急激な染着量の減少をもたらした。これに対し両性界面活性剤の場合、染着量はほぼ一定もしくは減少することが認められたが、その減少量は前者と比べ緩やかであることがわかった。 2)平衡染着曲線による界面活性剤の添加効果 一定の界面活性剤の存在下、各pHにおける平衡染着曲線からラングミュア-の式を適用し、各染着パラメ-タ-を算出した。その結果、アニオン・カチオン界面活性剤は均染剤、緩染剤としての効果が認められるが、両性界面活性剤の場合はこの効果以外に、一部これを媒介として繊維と染料が結合し、その結果染着量の増加をもたらすことが認められた。さらに両性界面活性剤の構造と染着量の関係を明らかにした。
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