当研究では超微弱発光計測法により、われわれが日常摂取する食品の中にごく微量に存在するフリ-ラジカルや活性酸素種の様態を把握をし、この生体障害性の強いフリ-ラジカルや活性酸素種の存在と健康との関係を考究すると同時に、食品中にあって逆にそれらを消去するように働いている物質をも検索する。この計画に従って2年間の研究期間を通じて以下のような成果を得た。 1.超微弱発光計測法による活性酸素およびフリ-ラジカルの捕捉技術を改良、食品での計測に最も適した計測法を開発した。 2.各種食品および調理食物につき超微弱発光の計測を行い、発光強度別の分類をし、発光レベルの高い食品群の選別をした。 3.その結果、高温の加熱処理をされた食肉や魚肉類に特別に高い発光が認められた。同様に加熱処理された炭水化物にも発光が認められたが、その程度は食肉類の場合に比べて低かった。 4.上記のような食品の構成成分のうち特定のアミノ酸に一定の加熱後に高い発光を示すものの存在することが判明した。 5.これらの発光には酸素の存在が必要で、発光強度はおゝよそ酸素分圧に比例するものであった。 6.特殊な微弱発光スペクトル分析装置を用いて発光種の推定を行ったところ、発光に一重項酸素の関与が示唆された。 7.特異的な発光阻害剤による検討から、発光のおゝもとに食肉類などの加熱変性により生ずるフリ-ラジカルの存在が判明した。 8.新開発の特異性の高い発光促進物質を用いた実験から、発光に一重項酸素やス-パ-オキシドなどの活性酸素種の関与が強く示唆された。 9.新鮮な野菜抽出液中にこれらの発光を有効に阻害する物質の存在することが実験より示され、食生活と健康との関連で強い関心が抱かれた。目下その有効成分の分離・同定作業を行っている。
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