配合染色の基礎となる単独染色系(ナイロン/酸性染料)を選び平衡染着量、染色速度を測定した。染色は均染性(D1)およびミリング(D2)酸性染料を用い、6ナイロンはフィルムを用いた。染色条件は中性(pH6)および酸性(pH3)、温度は90℃とし、とくに中性塩(塩化ナトリウム)添加効果を調べた。 平衡染着等温曲線は、ラングミュア-型(L型)と分配型(P型)との重なり合った形を示し、これは特にD2の酸性条件において著しく現われた。この条件でナイロン中の正荷電した末端アミノ基に対する染料アニオンのL型イオン結合と、非荷電疎水性部分に対するP型の非イオン結合とが併発するためと推定される。すべての実験結果は、L型とP型の一次結合の染着写温式で解析された。 染色速度はフィルム巻層法によって、ナイロン基質中の染料の拡散濃度分布から拡散係数を求め、とくにその濃度依存性を評価した。ナイロン中に熱力学的に区別できるL型種とP型種とが存在すれば、それぞれの拡散流れがあると考えて、二元拡散機構によって説明した。 中性塩の染浴への添加効果は、(1)染料の活量の増加、(2)中性塩アニオンと染料アニオンとの染着座席の競合により解釈できる。これら両種のアニオンの混合系の挙動は、異種の染料アニオンの混合系(配合染色系)の基礎となるものである。 配合染色系のモデルとして、均染性酸性染料(ナフチオン酸→G酸)と硫酸とのナイロン中の混合拡散(フィルム巻層法)の結果は、硫酸アニオンの先行と、それに続く染料アニオンによる置換を濃度分布として明瞭に示した。
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