研究概要 |
本研究は, 最近の住宅取得難や環境の悪化などにより, 住生活の質が低下し, 「人間らしい住まい」の確保や維持が困難になっていること, 一方わが国が, 世界にも稀な早さで高齢化さらには高齢社会を迎えつつある点に注目し, 人間らしく老いていく上で最低限必要とする住生活の条件の策定を目的とした予備的研究である。 問題の所在を明らかにするため, 本当に人間らしい生活を可能とし, 老いていく上で必要とされる住まいの基本的項目を設定し, 実態調査を行った。 調査内容は, 本人(健康や生活行動など)・家族(同居の仕方や生活形態など)・住宅(居住環境や住生活, 住意識など)の3つの側面である。 初年度は, 昭和22年に建設され, 集合住宅での居住経験が比較的長いと思われる都営高輪団地, 反対に昭和58年から分譲され, 居住経験の短いと思われる公団清新北ハイツの高齢者に対するアンケ-ト調査を実施した。 最終年である本年は, 福祉行政に先進的な取り組みをしている武蔵野市吉祥寺本町における住宅地に住む高齢者に対し, アンケ-ト調査をすると共に, 当初の目的を達成するために, 細部にわたる経年的な変化を見るための事例的な検討を行った。 結果は, (1)独立住宅が多く, しかも同居が多いものの, 将来は同一敷地内別住居を求める率が高い。 高齢者側から求めている子ども家族との生活の仕方は, 完全同居ではない。 (2)浴室や便所など, 住居が高齢者にも使いやすい工夫するは, 余りされていない。 必要な物的な整備に関する情報の伝達法を確立する必要がある。 (3)社会的な援助の必要性に対する認識は, 単身高齢者に強い。 夫婦でいても, 一方が欠けた時を考慮しすばやく必要な物的・人的援助を得られるシステムを行政と住民が一体になり確立する必要がある。(4〕人間らしく生きる上で, 住居のみの整備でなく, 地域環境までも射程にいれた指標づくりが必要である。
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