カンキツ類の苦み増加機構について次の3つの視点から研究を進めた。(1)カンキツ種子中のリモニンD環ラクトンハイドラ-ゼの精製、(2)カンキツ類の部位におけるリモノイドの代謝、(3)カンキツ品種の苦みがマ-マレ-ドの評価に与える影響について研究を行った。(1)ではアマナツ種子よりリモニン生成酵素を抽出し、DEAEセルロ-スを用いたイオン交換クロマトグラフィ-およびバイオゲルP-100を用いたゲル濾過を行い精製した。各精製段階を拘束液体クロマトグラフィ-およびディスク電気泳動法により、酵素活性および精製段階のチェックを行った。ゲル濾過により3つのピ-クが検出され流出量90〜100mlに高い活性を認め、比活性として7倍にまで精製された。電気泳動では精製によたバンドがより鮮明に認められた。(2)ではリモノイドの転流および代謝経路を明らかにすることにより摘果以前に苦みの生成を防ぐことも可能であると考え、葉、茎、果皮および種子別にバンペイユ、河内晩柑、川野夏ダイダイ、ワシントンネ-ブル、清見およびユズを用いてリモノイドの変動を検討した。試料はフッカ-ミクロト-ムで厚さ24μの切片を作成し、光学顕微鏡で組織を観察した。茎の皮層周辺および細胞間に黒色結晶が認められ、塩化メチレンおよび酢酸エチルに可溶のためリモノイドと推定された。皮層細胞の不定形物質はリモノイドの転流過程の形態と推定された。種子の外種皮で9月にオバクノンが減少し子葉ではリモニンが増加したことより、オバクノンが種皮より子葉に移行しリモニンとして蓄積したことを認めた。バンペイユ、河内晩柑、川野夏ダイダイの中晩柑類のリモノイド量は葉および茎で季節的に類似した変動を示し、リモノイドの分布とカンキツの品種間に相関が示された(3)ではリモノイド量の多い品種は加熱により風味が損なわれ、ナリンギンがマ-マレ-ドの風味の要因となることが示唆された。
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