カンキツ類の苦味増加機構について次の研究結果を得た。(1)アマナツ種子よりリモニン生成酵素を抽出し、イオン交換クロマトおよびゲル濾過により比活性として7倍まで精製した。(2)カンキツ類の部位におけるリモノイド代謝の検討を行った。茎の皮層細胞周辺にリモノイドと推定される暗色結晶を認め、オバクノンは種皮より子葉に移行しリモニンとして蓄積したこと、および9月から12月にかけて葉・茎の順にリモネ-トA環ラクトンの合成が行われ茎の皮層を転流し、果実で中性リモノイドとなり貯蔵されることを認めた。(3)マ-マレ-ドを調製し、果皮の前処理による苦みの増加を検討した。リモノイド量の多い品種では加熱により風味が損なわれ、逆にナリンギンの多いものは風味で有意差が得られ、風味の要因となることが示唆された。また、果皮を加熱することにより、リモニンよりリモネ-トA環ラクトンに転換し始め10分後には17ーデハイドロリモネ-トA環ラクトンが検出した。さらに加熱によりノミリンが増加することから、ノミリンがマ-マレ-ドの苦みに関与することが推定された。リモニンの多い品種は好まれない傾向を示したが、2種の品種の混合によりマイナス要因を緩和し、苦み、甘み、酸味を調和させ、風味の向上を認めた。(4)バンペイユを用いて果実酒を作成しリモノイドおよびナリンギンのアルコ-ルへの溶出を検討した。果皮からのリモニンの溶出はエタノ-ルおよびホワイトリカ-に、ノミリンはエタノ-ルおよび水において顕著に認められた。果皮を除去し果肉のみをホワイトリカ-に浸漬した果実酒は、苦みも少なくさわやかな風味を有し、果実酒として適していることを認めた。(5)果汁搾汁後のdelayedbitternessの発生条件について検討した。果汁搾汁後の保存温度は5℃より20℃(室温)、嫌気的より好気条件がリモノイド分解酵素の活性化の誘因となり、果汁の苦み増加に影響することを認めた。
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