コレステロ-ルを比較的多く含む食品について、乾燥、加熱、過熱などの処理がコレステロ-ル酸化物生成に及ぼす影響についてこれまで実験、検討してきた。TLCによる検出方法では、食品中コレステロ-ル濃度や共存脂質濃度が低ければコレステロ-ル酸化物は生成しにくいことが示唆された。また、結晶コレステロ-ルのみでは180度以上の過熱条件ではじめて酸化物生成が認められるのに対して、種々の食品では“ゆでる"程度の温和な条件でも酸化物生成が生じることが判った。食品では卵黄が最も明らかな酸化物生成を示した。そこで、卵黄における酸化物生成時の共存促進因子についてモデル実験系を設定した。その結果、共存脂質とくに共存リン脂質による酸化促進が示唆された。その原因については現在検討中である。一方、平成元年度分交付金によって購入したガスクロマトグラフ装置およびキャピラリ-カラムを用いてコレステロ-ルおよびその酸化物定量に着手した。結晶コレステロ-ルを除いてコレステロ-ル酸化はむしろ常温ですみやかに進行することが示唆されていることから、ガスクロマトグラフ(GLC)による高温条件下での耐熱性が問題となる。この点を考慮して充填剤の選択、昇温条件の設定など分析条件を検討している。本研究の目的のひとつであるコレステロ-ル酸化物の変異原性について予備実験を行った。可溶化剤に検討の余地をのこしているものの、酸化物には細胞毒性が強いことが示唆された。酸化物の培地中濃度の検討なども平成2年度の課題としてある。 以上
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