本研究は高齢者を対象とし、その人が感じる色の目立ちを明所視、薄明視、暗所視の種々の照度レベルに於て測定し、年齢によって違いがでてくるかどううかを調べるにあった。しかし高齢者は必ずしも当大学の実験室に来訪することは出来ないので、まず、携帯移動可能のメソピックル-ムを製作した。これは室内の床面が1mx1m、高さが1.8mのものであった。外枠は全てアングルで製作した。これによって移動時はル-ムを解体して運び、所定の場所に行ってから短時間で組み立てられるようになった。照度の調節は大学の大型の実験室のように精密にはいかないが、0.01ルクスから300ルクスまで、必要な照度は迅速に設定できるものとなった。 今年度だけでは各年齢層について数多くの被験者を得ることはできなかったが、今までの結果では、少なくとも色の目立ちに関しては、年齢層による差は見られないことが分かった。すなわち目立ちの色刺激としては、外側が青系、内側が種々の色相の12種類の2色配色刺激を使用し、それらを一面に並べて目立つ刺激の順番を決定した。照度が高い明所視レベルでは内側がマンセル色相8Rの赤のものが最も良く目立つと全ての年齢層の被験者が評価し、また照度が1ルクスの薄明視でも、さらに0.01ルクスの暗所視でも、外側が背景の黒から刺激を浮き立たせる役目をして、やはりこの刺激が一番良く目立つ、そしてこれも年齢による差はないということが分かった。 高齢者の実験は多くの問題のあることも今回の実験を通して分かった。たとえば目立ちを判定するのに時間がかかること、1回の実験時間が長すぎると疲れてしまうこと、被験者の所に行って実験をするので短い時間に数多くの被験者で実験することが不可能であること、などである。今後時間をかけて忍耐をもって実験を進めて行かなければならない。
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