新素材の吸汗性・吸湿性合成繊維と、従来のナイロンなどを用い、発汗による衣服を通しての熱と水分の移動を測定し、着用快適感を調べ、快適性にどのような物理的性質が影響しているかを検討した。 I.着用実験 試料として化学物質導入のナイロン100%布、異形断面ナイロン100%布、レギュラ-ナイロン100%布を用いた。着用実験を行うため長袖、丸首形のシャツを作製した。被験者は1名、各試料くり返し3回、計9回の着用実験を行った。温度・湿度センサ装着部位は胸と背とし、シャツの内側と外側にとりつけた。平均皮膚温を求めるため、温度センサを8ケ所にとりつけた。実験方法は、人工気候室入室後30分間安静、15分間5度に傾斜させたトレッドミル上で歩行運動をし、後30分間安静にさせた。この間、温度・湿度を1分間隔で連続的に測定し、発汗感覚・シャツのぬれ感、湿り感、温冷感覚、快適感覚などについて被験者に申告させた。 II.物理的性能測定実験 吸湿性、吸水性、含気率、保温性、通気性などの他、乾燥特性の実験を行った。 III.実験結果 発汗による温度・湿度変化より、胸部より背部の方が温度湿度が高かった。運動による発汗で、衣服内の温度は低下し、湿度は運動途中急激に上昇し、45分時に最高時を示し、後低下していくのが、レギュラ-ナイロンと新素材のナイロンとは挙動が異っていた。被験者の主観的感覚は湿度変化に影響され、着用快適感はレギュラ-ナイロンより新素材の方が高かった。衣服内水分量および体重減少量は、湿度変化とよく一致し、被験者の主観的感覚に影響していることがわかった。
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