研究概要 |
申請者らは、広く乾熱調理における食品成分間反応を研究対象とし、各種食品素材の配合割合の変化による加熱反応生成物の検討、更にその生成機構からみた食品素材の選択方法などについて検討を加えている。 今回は特に、固相系食品であるクッキ-を用いて、新しい食品素材である糖アルコ-ル、アミノ糖等を含む甘味料等の調理への利用の可能性、食物繊維添加における加熱反応生成物の差異、及び、その安全性、有効性等を合わせ、多面的に検討を加えた。 1.クッキ-加熱中に生じる変化としてアミノカルボニル反応がある。この反応のモデル実験として、クッキ-の焙焼条件で糖(フルクト-ス及びグルコ-ス)とタンパク質(オボアルブミン)とを反応させ、検討した。その結果、塩基性アミノ酸(ヒスチジン、アルギニン)と、中性アミノ酸のプロリンの損失が顕著であった。 2.糖(フルクト-ス)とアミノ酸(βーアラニン)を用いたモデル実験の加熱反応生成物をHPLCで単離精製した後、NMR,FABーMSで分析した。その結果、加熱初期の香気成分として、2,3ーDihydroー3,4ーdihydroxyー5ーacetylfuran(DDAF)が同定できた。 3.各種の食物繊維(黄粉、小麦タンパク質、大豆タンパク質、米ぬか、ココア)や糖アルコ-ル、アミノ酸をクッキ-に添加し、香気形成に及ぼす影響と添加したクッキ-の嗜好性について検討した。その結果、申請者らが、クッキ-の香気成分として同定しているDDAF並びに 2,3ーDihydroー3,5ーdihydroxyー6ーmethylー4(H)ーpyranー4ーone(DDMP)の生成量は食物繊維添加によって減少した。また、嗜好性に関しては、全般的にクッキ-重量の1%添加までは好まれる傾向にあったが、添加量が増加すると好まれなかった。
|