これまでの研究でラットに魚油を投与した際に血清鉄の低下が認められ、しかも投与する油脂の種類および量期間などの条件によりその程度が異なることが示唆されてきている。そこで、今年度は血清鉄低下の作用機序、を検索するための予備段階として、投与する油脂の投与法および投与期間等について昨年度に継続して予備実験を行っている。すなわち、これまでに魚油の種類としては、イワシ油、イカ油、マダラ油、スケトウダラ油を用い、油脂のレベルを10%あるいは15%で4〜8週間投与し、コ-ン油を投与した対照群と血液性状、肝臓成分(油脂、タンパク等)や組織学的所見について比較検討を行ってきている。そして魚油投与群ではすべて血清鉄の低下を示していたが、とくにイワシ油において、もっとも著しくまた4週目と短期に血清鉄の低下を認めていることから今回、コ-ン油とイワシ油を用い、油脂のレベルを20%として10週間ラットに投与することによりその生態に及ぼす影響について調べている。実験の飼料は、小麦グルテンを5%と低タンパクレベルとし、コ-ンスタ-チ、ビタミンEはじめビタミン・ミネラル類を十分量含む飼料に各油脂を20%の割合に混合したものである。実験群(S群)には20%コ-ン油飼料と20%イワシ油飼料を5日置きに替えて与え、対照群(C群)には20%コ-ン油飼料のみを与えた。その結果、体重量変化を見ると、投与一週後にはそれぞれ減少し、C群は以後一定していたが、S群ではさらに減少傾向を示し、C群に比べ有意に低下していた。またS群において血清鉄の著しい低下が認められた。血清タンパク、コレステロ-ル量には差は見られず、一方血清TG、NEFAが増加しており、またGOT、グアナ-ゼなどの酵素活性の上昇がみられたが、ビリルビン値は一定であった。これらの現象を解明すべく、現在、肝臓成分の分析と組織学的検索を実施している。
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