本研究における文献、また一次資料について、初年度の計画通り収集をおこなった。 1990年1月14・15日には研究会をもった。そこでは、いくつかのテ-マを取りあげ、新しい知見を得た。そのなかから主なものをあげてみると、次のようである。1.いわゆる「観測問題」の認識論上の課題を明らかにし、2.超流動の研究に見る科学者の創造生の特質、3.方法論的側面からミリカン研究を取りあげ、歴史研究の実証性いの意味、また、4.同様の側面から世紀転換期の実験を取りあげ、その歴史的・社会的位置を明らかにした。さらに、5.この時期の物理学思想の特徴を捉えるための視点も得られた。なお、何回かの研究運営等もおこない、研究の進展を促した。 そして、前期の知見の一部を論文として雑誌に発表した。 次年度は、初年度に明らかになった知見を基礎に、とくに、1.量子論的自然観の形成過程の考察、2.量子物理学的対象に対する物理学的記述(モデル化、数学的定式化、量子統計など)に関する検討、3.微視的対象と観測装置、量子力学的認識像についての考察、4.ミクロな描像と記述とを明確にする1910年代の実験的研究ならびに実験装置・方法を取りあげる。そして、その研究成果を論文として雑誌等に発表する。
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