本研究の最終年度は、前2年度にひきつづいて、研究協力者の助力を得て、当初の本研究の目的であった研究成果全体の総合、すなわち量子物理学の理論・自然観・実験の3つの領域へのアプロ-チに関する方法論的視点に関して最終的な検討をおこない、これまでに新たに明らかになった、これらの点についての知見の整理を進めた。 そして、それらの方法論的視点に基づいて研究を進め、新たに次のような部面において新知見を得ることができた。 (1)量子物理学実験にみられる科学実験の現代的な特質、すなわち新たな自然の階層における発見を求めて、連綿として続けられる実験研究の広がりと蓄積の実際、特に研究目的の設定、装置設計の思想及びその理論、実験装置の基礎となる生産技術の転用のあり方について。 (2)原子・分子の運動を記述する新理論形式、すなわち量子力学の形成の基礎となった前記量子論の展開とその新理論形式との関連性、および1920年代に見られる量子物理学に特徴的な認識論的諸問題などに関して、個別的ではあるが全体に関連する理論的諸問題について。 (3)量子物理学的自然像が与えた科学思想・哲学に対する影響について。 以上、本研究の最終的な成果の総括をおこない、その成果の一部を論文としてまとめ、雑誌等に発表することができた。
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