(1)自動制御史に関する文献リストを作成した。これにより、従来の研究の理論的レベルを整理したところ、外国では、Otto MayrとRorntopの研究がとりあえずは水準をいったものになっているが、いずれも全時代をカバ-していない。日本では、上林貞治郎らのオ-トメ-ション研究との関連での経済学的アポロ-チが従来主流であったが、近年技術発達の法則性との関連で、石谷清幹、田辺振太郎、中村静治らの研究の再評価が要請されているようにみえる。この関連で、自動制御の技術論的意義を理論的に整理することが必要であったため、この作業を行った。 (2)この理論的な作業は、とりあえず一段落ついたので、論文にまとめ、6月(1990年)に印刷される予定となった。 この基本的な点は、中村静治らの「動力-制御」論者の制御の概念は、運動の抱束をまで含めて「制御」の概念に含めていることにある。技術史的には、これら作業機の機構に含まれた道具部分の運動であり、故障したり、労働対象(たとえば紡織機における糸)の都合で、機械を自動的にとめる装置としての自動制御的な機構をもつ自動機械の発達とは、根本的に異なるものである。この点を理論的に解明したことは、重要な成果であった。 (3)具体的な制御技術の発達過程の分析としては、まず第一に、製粉機などの機械にとける制御機構の発達史の解明をおこなった。ついで、制御論で、論点の中軸を占めるフィ-ドバック制御史を解明(但し、初期の発展過程)した。これは、あわせて、「動力-制御」論者のいう「特殊人間的労働」としてフィ-ドバックを位置づけることは誤りであることも、解明できた。 (4)以上、今年度は主として、問題点を整理した上で理論的な整理と機械技術史における制御の研究を行った。
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