「両大戦間期のフランスにおける文学者と科学者のアンガジュマン(社会参加)に関する実証的研究」というテ-マに基いて、本年は次のような研究経過を見た。 文学者のアンガジュマン 「第二次世界大戦下におけるフランスの文学者のアンガジュマン(社会参加)について」を書いた後、1930年代の文学者のアンガジュマンに研究の対象を絞った。その結果、第二次世界大戦中の文学者のアンガジュマンの鍵は、それがレジスタンス派であれ対独協力派であれ、1930年代という時代とその時期のそれぞれの行動と密接に関わっていることが解明できた。今回は、その因果関係について大枠を述べるにとどめたが、今後はその間の一次資料の入念な検討を重ね、大枠の行間を埋めていく作業を継続するつもりである。 科学者のアンガジュマン 本研究が分析の対象としていたポ-ル・ランジュヴァンとフレデリック・ジョリオ・キュリ-のフランスにおける資料所在地が明らかになったが、残念ながら日本からのそれら資料の入取は不可能であることも判明した。今後、渡仏の機会をつくり、これら一次資料の入手を実現し、本格的な資料分析によってみのりある成果を期したい。そこで本年は、同時代の関連する他の国の科学者たちの行動を分析した。特にアメリカの原爆開発に深く関わったハンガリ-生まれのレオ・シラ-ドと、サイクロトロンの発明者であるアメリカ人ア-ネスト・ロ-レンスを対象として分析を試みた。ランジュヴァン、ジョリオ等フランス人科学者たちと、これら科学者たちとの相異点の分析解明は、今後に残される。
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