研究概要 |
研究経過ー1.都内公立盲学校、小学校の児童について、1987より、体育授業を中心に運動行動の観察と記録をはじめた。2.1989年4月より、新入一年生(全盲3人)を中心に'91年3月まで、a.在校時、b.体育授業時の運動行動を追跡記録(VTR))し、その変容をみるとともに、上級学年(4年生)および正眼児と適宜比較した。観察頻度は、ほぼ週一回である。 研究成果ー1.体力・運動能力テスト結果の逐年的変化(全学年)をみると、a.正眼児との差が少ないもの(握力・上体反らし)、b.著しくおとるもの(背筋力・立位体前屈・斜懸垂・ボ-ル投・短距離走など),c.低学年ではおとるが中学年以後に差が減少するもの(垂直跳・ジグザグ走など)がある。bは、平衡能・パワ-・方向性のかかわる技能、cは活動場面の空間図式形成に対応して動作様式が発達する技能で、これが記録の向上に反映している。 2.体育活動についてみると、体操系動作では、時間的空間的に左右アシンメトリ-なもの、、リズミカルな協応を要するもの、体幹の伸展や捻てんを伴うものが難しい。また、ボ-ルゲ-ムの場合は、コ-トの方向性や相手との距離の認知に応じて、投げ受けの回数が増し、プレイが活性化する。 3。学内の空間図式形成は、特定の場所に、a.一人で行けない、b.一人で行けるが言語化できない,c.行けるし言語化できるの段階で発達する。言語化の質と量は、空間図式の発達に応じてかわる。 全般を通じ、盲児においては、自分の位置・方向・距離などの空間図式形成に対応して、走跳投をはじめとする技能が著しく改善し、対人的活動も活性化する。また、体育は、空間図式を確立し多様化する契機が多いことが、教授ー学習過程の分析からたしかめられた。
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