現在の保健体育科教育には、多くの問題点が挙げられている。例えば「たくましい子供を育てる」ことと「楽しい体育」との関係、「体育科における良い授業」の捉え方、研究・実践の着眼としての「個性化」と「基礎・基本の重視」の関係等であり、早急に解決されなければならない事項が山積みにされているのが現状である。 これらの課題に対して、多くの実践報告や研究発表がなされてきているが、あまりにも専門的にまた多方面に渡り膨大な情報量になってしまい、研究者や現場の教師にとっても、早急に解決すべき課題の方向性を見失いがちになってきているのではなかろうか。 そこで、今回の研究は、前回の6年生から5年生に対象をうつし、「リレ-・短距離走」の特性をふまえた指導を試み、各チ-ムのリレ-タイムやバトンパスタイムの短縮を狙い、結果として運動意欲や児童の短距離疾走能力の「何が」どのように変容するのかを求めた。 分析結果として、5年生男女34名を対象に5時間の授業を行い、以下のような知見が得られた。 1.全リレ-チ-ムのリレ-タイムは合計タイムよりも速くなった。またバトンパスタイムは平均2.3秒を示した。 2.児童の短距離疾走能力は、上・中位グル-プでは向上せず、下位グル-プは高まる傾向を示した。 3.60m疾走を児童は、歩幅を伸ばさずに、歩数頻度を上げて走る走法を示した。 4.児童の運動意欲は、走力によっても違い、足の速い児童の方がより積極的な意欲の変容を示し、遅い児童には消極的な態度が見られた。 今後の課題としては、陸上運動の基礎・基本をふまえた授業内容と方法とを試行し、より効果的な学習指導方法を確立していきたい。
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