喘息児の健康づくり、体力づくりを目的として、1989年11月より1990年5月末までと、1990年10月より1991年3月末までの13ケ月間にわたり、毎週1回、各1時間の水泳訓練を実施した。泳法は、特に呼吸機能を向上させるため、呼気と吸気を一気に行なうドル平泳法を用いた。 被検児は、6歳〜11歳喘息男児8名(軽症4名、中等症2名、重症2名)、6歳〜12歳喘息女児10名(軽症10名)の合計18名、及び対照として健常男児1名、女児1名である。 測定は、1989年12月、1990年3月、1990年7月、1990年12月及び1991年3月の5回行なった。測定項目は、肺換気機能(FVC、FBV_<t〓o>、PFR)、血液一般検査(赤血球、白血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット、MCV、MCH、MCHC)、免疫グロブリンE(IgE)、カテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)及びプロスタグランジン(PGF_2α)、また自転車エルゴメ-タ-による漸増運動負荷を加え、心拍数、呼吸数、エネルギ-代謝の測定を行なった。 結果、泳力の向上と共に肺換気機能の向上が認められた。しかし、喘息に関係する免疫グロブリンIgE値は、1989年12月に1124.1±1064.3、1991年12月911.0±795.5であったが、有意差は認められなかった。同様に気道の収縮に関与するといわれているPGF_2αには多少の変動はあったが有意差は認められなかった。しかし、気管支の拡張などに効果のあるノルアドレナリンには、有意な差が認められた(P<0.01)。 特に体力の面では、持久性運動の指標であり、代謝性アシドージスを生じないで行ない得る最大酸素摂取量の域値(anaerobic threshold:AT)の向上が認められた。 以上、長期水泳訓練は、平素運動不足に陥りがちな喘息児にとって、発作の苦しみを与えないで行ない得る有効な体力づくりと言える。
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