研究概要 |
本研究は,小児の不可解な骨折および老齢期における骨粗鬆症の増加原因と予防法などを明らかにする目的から、運動やCa摂取量の違いが,骨硬度・骨成分などに,どのような影響を及ぼすのかをマウスを用いて経時的に検討したもので、特に本年度は老齢期について行い、結果は以下のとおりである。 (1)大腿骨重量は,雌で運動・普通食群が高値を示し,48週齢以降で,他の群との間に有意差が認められたが、雄では差が認められなかった。 (2)骨硬度は,各群とも加齢に伴い低下する傾向にあったが,雌雄とも,低Ca食群に比べ普通食群の低下は緩かであった。また各週齢とも最も高値を示したのは,運動・普通食群であった。 (3)骨成分のカルシウム,リンおよびヒドロキシプロリン値は,いずれも骨重量当りの濃度では、各群間に差は認められなかったが,大腿骨全体に含まれる、カルシウム,リンおよびヒドロキシプロリン量は,低Ca食群に比し,普通食群が高値傾向にあった。 (4)血中ホルモンのカルシトニンおよびパラソルモン濃度は,雄は各群とも差は認められなかったが,雌のパラソルモン濃度では,52週齢以降で非運動群に比し,運動群は低値を示した。 以上,本研究から老齢期における骨脆弱化の予防には,運動およびカルシウム摂取の充足が果たす役割は,かなり大きいものと考えられた。 本格的な高齢社会に向けて、高齢者の体力・症状に応じた運動処方の確立と実践が急務と考える。また骨粗鬆の発症予防として高齢者に対するカルシウム摂取の,より一層の啓蒙およびカルシウム摂取量や補給のための食品の組合せなどの検討も必要と考えられる。
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