われわれは、先行研究において発育期のラットに高強度ジャンプ・トレ-ニングを負荷することにより、遺伝的素因の影響を強く受けるとされる筋線維組成が変化する可能性があることを認めた。この結果にもとづき、成熟の域に達した場合でも、トレ-ニングにより発育期におけると同様な筋線維組成の適応性がみられるかどうかについて実験を行った。 実験には、生後21週齢のWistar系雄性ラットを用いた。体長(尾部を除く)の約2.3倍のジャンプ高を1日50回×2セット運動を行うという条件下で15週間のトレ-ニングを行った後、主働筋と考えられる腓腹筋を摘出し、表層部と深層部に分けて筋線維組成を明らかにした。 結果は、表層部および深層部の筋線維組成ともにジャンプ・トレ-ニングによる影響は観察されなかった。これは、発育ラットを用いた先行研究の結果とは異なるものである。 更に、われわれは筋線維組成の適応性に関して次のような実験を試みた。実験は、6週齢のWistar系雄性ラットを用い、5週間のTail-Suspensionを行い、その回復過程後の成熟期に近づいた時期までヒラメ筋の不使用による筋線維組成の変化を追跡した。 5週間のTail-Suspensionにより、TypeI線維の比率は顕著に減少したが、5週間の回復過程を経た成熟期に近づくにつれて、普通成熟期に観察される比率にほぼ戻ってきた。 成熟期の骨格筋線維組成は、トレ-ニングやその他の刺激に対する適応性が乏しいことが示唆され、且、刺激を去ると用意に本来の筋線維組成の比率に還元することが示唆された。
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