申請した研究課題について以下の成果を得たので報告する。 1.『差標識化学修飾法によるハプトグロビン(Hp)のヘモグロビン(Hb)結合部位の同定』……申請書『研究方法』に従ってHp-Hb複合体をまずアセトアミジン化した。次にSDSを加えて両者を解離させた後、Hp上の未修飾アミノ基をトリニトロフェニル(TNP)化した。その結果、H鎖に2.5ケのTNP基が導入された。一方、L鎖はほとんどTNP化されず、Hbとの結合に直接関与しないことが確かめられた。TNP化H鎖をキモトリプシン消化し、消化物を逆相系高速液体クロマトにかけることによって3種のTNP化ペプチドを得ることができた。それらを分析した結果、TNP基はIle-1のα-アミノ基、Lys-136およびLys-218のε-アミノ基にそれぞれ導入されていることが分かった。一方、上記『修飾法』を遊離のHpに適用した『対照実験』を行った所、H鎖へのTNP基の導入個数は0.6ケへと減少し、しかもそれはもっぱらIle-1のα-アミノ基に導入されていた。従って、以上の結果から(1)HpのHb結合にはH鎖上のLys-136とLys-218の2残基が関与すること、(2)H鎖Ile-1のα-アミノ基は遊離の状態においても分子内に埋れて存在すること、が明らかになった。 2.『免疫化学的方法によるHpのHb結合領域の同定』……項目1の差標識実験からHbとの結合に関与することが明らかとなったLys-136を含むペプチド(124〜138)及び“extraloop"に含まれるペプチド(159〜175)を合成し、均一なペプチドを単離した。予備的検討では、これらのペプチドがHpのHb結合反応を阻害するという結果は得られなかった。今後はより低濃度のHpとHbの使用が可能な高感度結合活性測定法の開発と、より長鎖のペプチドの調製を検討し、差標識法によって明らかにした2つのリシン残基のHb結合における具体的な役割(どちらのリシン残基がHbα又はβサブユニットとの結合に関与するのか)を明らかにし、Hp-Hb間相互作用を分子レベルで解明していきたい。
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