研究概要 |
本年度は最終年度にあたり、これまでの知見の総括とカテプシンEの機能的・進化的観点からの考察を行った。 1.カテプシンEの構造と他のアスパルティックプロテア-ゼの構造についてハイドロパチ-検索を行ったところ、カテプシンEと最も構造的に似ているのはペプシノ-ゲンAであった。この結果は一次構造上の両者の類似性と一致することである。しかし、ペプシノ-ゲンが分泌蛋白であるのになぜカテプシンE細胞内プロテア-ゼであるかという点については今のところ構造上の基盤は不明である。 2.カテプシンEはin vitroで内皮細胞由来のホルモン、エンドセリンの変換酵素として作用し得ることがわかった。本酵素はビッグエンドセリンー1,ー2,ー3いずれにも働き、特異的にそれぞれの成熟型を産生した。しかし、この反応は中性条件下では消失し、また、内皮細胞がカテプシンEをもつという証拠が得られなかったため、生理的条件下でin vivoで本酵素が働いているのか否かは明らかではない。 3.ラット胸腺よりプロカテプシンEおよびカテプシンEを分離し、その特性を調べた結果、プロカテプシンEも酸性溶液中で活性があることを示唆するデ-タが得られた。しかし、中性域では両型とも不活性であり、本酵素の機能、生理的基質についてはなお調査を要する。本酵素の主要な分布組織が胃粘膜であることを考え、今後は、胃組織を用いて更に重点的に本酵素の意義を調べる必要があると考える。
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