高等動物における半数体細胞を樹立するために、以下のような各種のアプロ-チを試みた。 1. マウス半数体テラトカルシノ-マ細胞作成の試み:マウス未受精卵を人為的に活性化した半数体単為発生胚と正常受精卵由来の胚を雄マウス精巣に移植し、テラトカルシノ-マの発生率を調べた。受精卵からは高率に(70〜80%)発生が見られたが、半数体単為発生卵からは100以上の移植にもかかわらず全く発生は見られなかった。 2. 半数体胚性幹細胞作成の試み:半数体単為発生胚をin vitroでフィ-ダ-細胞上で培養し胚性幹細胞の分離を行なったが、2倍体の胚と比べて内部細胞塊の細胞の生育が悪く、また培養中に2倍体化してしまうことが判った。半数体細胞の生育促進のためビタミン類・生長ホルモン類の効果を見たが目的にかなうものは見つからなかった。また細胞の倍数化を防ぐため、クロラムフェニコ-ル・5ーアザシチジン等の影響をみたが効果はなかった。 3. キメラマウスからの半数体細胞株の分離:半数体単為発生卵を8細胞期で同時期の受精卵とキメラを形成させ子宮に戻し、胎児期・成体期での半数体細胞由来の細胞の発生運命を調べた。胎児期では高率に単為発生胚由来の細胞が見られるが、成体においては単為発生胚由来の細胞は脳・目・毛にのみ存在した。キメラ形成を行なった場合、半数体の2倍体化は胎児期のごく初期に起こると考えられた。 4. 発ガン遺伝子導入による半数体細胞の株化の試み:半数体単為発生卵にcーmyc・largeT等の遺伝子をマイクロインジェクション法で導入した。初期胚で発現するようにエンハンサ-・プロモ-タ-を変えることにより半数体細胞の生長促進がみられた。各種ガン遺伝子の発現調節域を改変することにより、半数体細胞の株化の可能性が示唆された。
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