カルパスタチンはカルパイン(Ca^<2+>依存性細胞内プロテア-ゼ)の内在性阻害タンパク質である。一次構造上の特徴として区別できる領域を5つもち、そのうち4つは互に類似している。我々はブタカルパスタチンについて、遺伝子工学的手法を用いた構造-機能相関の解析から、繰返しドメイン(約140残基)単独で阻害機能をもつこと、そして、中央部保存配列が重要であることを既に報告した。今回ヒトカルウパスタチンについても同様の結果を得た。さらに、ヒトゲノムDNAの部分構造解析した結果、ドメイン1は4つのエキソンに分断され3ケ所の高保存配列はそれぞれ別々のエキソンにコ-ドされていることが判明した。このうちエキソン1Bは27アミノ酸残基をコ-ドし中央部保存配列を含む。化学合成した27残基オリゴペプチドはカルパインを強く阻害することからこのエキソンは機能サプドメインに対応することが明らかとなった。現在カルパインに特異的低分子性阻害剤は存在しないため、上記の結果は将来ドラッグデザインによって合成阻害剤を開発することが可能であることを示唆し期待される。カルパスタチンin vivoでリン酸化される。ヒトカルパスタチンcDNAの機能ドメイン断片を動物細胞発現ベクタ-に接続し、トランスフェクション法により培養細胞に遺伝子導入を行い発現させたところ、生産物はリン酸化されることを見い出した。機能ドメインのリン酸化が阻害活性にどのような影響を与えるのか今後の検討課題である。また、機能ドメインの中のどの部位がリン酸化されるかについても明らかにする必要がある。プロテインキナ-ゼC(PK-C)はTPAによって代謝分解が促進されるが、カルパスタチンの合成オリゴペプチドを細胞培養液に添加するとこの現象が抑えられた。in vivoでカルパインがPK-Cのダウンレギュレ-ションに関与していることを示す。
|