カルパスタチンは組織、細胞によって分子量が異なり、赤血球型ではドメインLおよび1を欠く。ドメインLのN末オリゴペプチドを合成し、抗体を調製しようと試みたが、抗体価が低く実験に用いることができなかった。しかし全長カルパスタチンを抗原にして、モノクロナ-ル抗体を作成することにより、赤血球型と筋肉型を区別することが可能となった。すなわち、抗体CSF1ー2はドメイン1を認識し、筋肉型に特異的であるが、抗体CSL1ー5はドメイン3を認識し、筋肉型、赤血球型に共通領域を認識する。一方、トリ赤血球では他の組織と同様の分子量をもつ.ほ乳類の赤血球は鳥類と異なり細胞核をもたないことから、赤血球進化とカルパスタチンの分子多様性の関係、また多様分子間の機能的相違の解析が今後の課題として提起された。 カルパイン、カルパスタチン系の生理的機能探究の一端として、細胞増殖との関係を調べた。mーカルパインおよびカルパスタチンのレベルはHTLVー1感染リンパ球系細胞株で顕著に増加している。一方、HTLVー1 Taxは宿主細胞遺伝子の発現を制御し、ラット線維芽細胞をトラスフォ-ムさせる作用をもつ.そこで、ウエスタンブロッティング法およびノ-ザン法を用いて、ラット線維芽細胞系においてTaxによる形質転換がカルパイン・カルパスタチンのレベル変化をもたらすかどうかを調べた。この結果、リンパ球系とは異なり線維芽細胞系におけるmーカルパイン・カルパスタチンのレベルはすでに高く、Taxによる発現増強作用は認められなかった。
|