研究概要 |
平成1年度で測定に成功したオリゴデンドログリア細胞(OLG)の長鎖脂肪酸縮合活性について、2年度ではさらに詳しく調べた。先ず、単離OLGでその縮合活性が非常に低くなっている原因として、酸素のオルガネラにおける分布が変化している可能性が考えられたので、種々の条件でOLGをincubateさせたあとの縮合活性の分布を測定した。超音波で細胞を破砕し、1,600g pellet(核画分)、20,000g pellet(mitochondria画分)、100,000g pellet(microsome画分)とに分離し、16:0ーCoAと20:0ーCoA縮合酵素活性をGCーMS法により測定した。その結果16:0ーCoA縮合酵素活性は、単離直後のOLGでは意外なことに、「mitochondria画分」のほうが「microsome画分」より3倍近く強い活性を示し、20:0ーCoA縮合活性は、各3つの画分に同程度に分布していた。またコルヒチン非存在下に、abーcAMPとともにincubateしたOLGでは、20:0ーCoA(16:0ーCoA)縮合活性は、単離直後より10倍近く活性が増大し「mitochondria+核画分」で、750(320)pmol/30min/mg protein、「microsome画分」で280(60)pmol/30min/mg proteinの活性があった。ところが、コルヒチン存在下でincubateしたOLGでは、「mitochondria+核画分」で420(1580)pmol/30min/mg,「microsome画分」で390(80)pmol/30min/mg,あった。(なお()の中は16:0ーCoA縮合活性を示す。)さらに、「microsome画分」の脂肪酸量を測定したところ、単離直後のOLGでは、8μg FA/mg proteinしかなく、incubateしたOLGではそれが50ー100μg/mg proteinまで増大していたが、それでも通常の脳から取ったmicrosomeでの値400μgFA/mg proteinよりかなり小さい。これは、単離細胞のいわゆる「microsome画分」は、組織から直接調整した「microsome」とは異なる性質を有し、縮合酵素の分布や生合成もmicrotubuleの影響を受けさらに縮合酵素の種類によって影響の受け方が違うことを示唆している。
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