血中板活性化因子の生合成調節機構をヒト多形核白血球およびウサギ肺胞マクロアァ-ジを用いて詳細に検討した。その結果、まず第一に、血小板活性化因子(PAF)合成酵素であるアセチルトランスフェラ-ゼの活性が、細胞を暖めるだけで刺激時と同様に大きく上昇することを見出した。しかし、細胞を暖めただけの場合には刺激した時と異なりPAFは全く産生されてこなかった。このことは、アセチルトランスフエラ-ゼの活性化が起きるだけてはPAFが作られないことを示している。そこで、細胞を暖めただけの場合と、刺激した場合についてPAF生合成の基質であるリゾPAFの量を比較してみた。その結果、細胞をただ暖めただけの場合にはコントロ-ルに比べてリゾPAFの量には差がみられなかったのに対し、刺激した場合にはリゾPAFの量が大きく増大していた。そこで、次に、細胞に外からリゾPAFを加えてみることにした。ヒト多形核白血球の場合にも、ウサギ肺胞マクロファ-ジにも、外から加えたリゾPAFに応じてPAFが多量にできてくることが分った。しかも、この時アセチルトランスフェラ-ゼやPAF分解酵素であるアセチルヒドラ-ゼの活性には全く変化がなかった。この事実はPAF産生においては生合成の基質であるリゾPAFの供給の変動が、PAFの合成誘導の引き金となっていることを強く示唆するものである。炎症などの際には、種々のサイトカインに加えてホスホリパ-ゼA2も局所に増加してくることが知られているが、このような時に出現してくるホスホリパ-ゼA2もリゾPAFの細胞内外におけるレベルを増大させることにより、PAF産生に大きな影響を与えていることが予想される。実際、すい臓のホスホリパ-ゼA2を加えことにより、ヒト多形核白血球のPAF産生は大きく増大することが判明した。
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