血小板活性化因子(PAF)は、強力な血小板活性化、血圧降下、血管透過性亢進など多彩な生理活性をもつエ-テル型リン脂質であり、アレルギ-や敗血症などにおいて重要な役割を担っていることが強く示唆されている物質である。本研究では、PAFの産生調節の仕組みを多形核白血球やマクロファ-ジを用いて明らかにし、いくつかの病態との関連を追求した。 1.PAF合成酵素活性の変動。細胞をA23187等で刺激すると、PAF合成酵素であるアセチルトランスフェラ-ゼの活性は著しく上昇する。一方、細胞を37℃に加温するだけでやはり一過的にアセチルトランスフェラ-ゼの活性が上昇することを見出した。しかし、このときPAF産生はみられなかった。 2.PAF産生に及ぼすケトン体の影響。白血球の細胞に、アセト酢酸やβヒドロキシ酪酸を0.5mMから5mM程度加えると、細胞活性化時のPAF産生が2ー3倍に上昇した。この濃度のケトン体は、病的なレベルのものであり、正常人では認められないが、糖尿病などではしばしば観察されるレベルのものである。従って、糖尿病などでケト-シスを起こしている場合、全身レベルでPAF産生が亢進している可能性がある。 3.PAF産生に及ぼすリゾPAFおよびホスホリパ-ゼA_2の影響。PAF産生の一方の基質であるリブPAFを細胞に加えると、PAF産生が誘導させることが判明した。このことは、PAF産生の開始にあたって、リゾPAFの供給の増大が決定的に重要であることを示唆している。一方、細胞に加えるとリゾPAFを生じるホスホリパ-ゼA_2を加えることによっても同様の結果が観察された。炎症時にはホスホリパ-ゼA_2での活性が上昇していることが多いので、関連性が注目される。
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