研究概要 |
蛋白質のカルボキシメチル基転移酵素(PCM)は、Sーアデノシルメチオニンのメチル基を基質蛋白質のカルボキシル残基に転移する反応を触媒している。真核細胞の本酵素は分子量25,000のモノマ-構造を持ち、基質特異性は広い。生理的には、加齢などにより蛋白質中に生じたDーアスパラギン酸やイソアスパラギン酸を正常状態に復帰させるため働いていると考えられているが、明確ではない。我々は本酵素の構造を明らかにするため、ヒト赤血球PCMの部分アミノ酸配列から作った合成オリゴDNAプロ-ブとして、ラット脳cDNAライブラリ-からPCMに対応するcDNAクロ-ンを拾いだした。その結果、0.8Kbと1.6Kbのインサ-トDNAを持つ2種のクロ-ンが得られた。塩基配列決定結果から、短鎖DNAは長鎖DNAの5′側に含まれることが判り、更にラット脳PCMは分子量24,700、227個のアミノ酸からなると推測された。今回得られたcDNAから予測されるラット脳PCMのアミノ酸配列と、最近、ヒト及びウシ赤血球PCM蛋白質から得られたアミノ酸配列とを比較すると、両者とも90%以上という一致が見られ、本酵素は遺伝的に極めて保存された構造を持つことが判った。本cDNA中の蛋白質をコ-ドする領域のDNAをプロ-ブとしてノザンブロット解析を行った所、3種の長さの異なるRNAの存在が明らかとなった。次いで、ラットゲノムDNAを各種制限酵素処理後サザンブロット法による解析を行い、ゲノム中のPCM遺伝子について検討したところ、偽遺伝子の可能性をも含めて複数遺伝子の存在を示唆する結果を得た。そこで我々はサザンブロットの結果に基づき、ゲノムDNAライブラリ-を作成した。cDNAをプロ-ブとしてスクリ-ニングを行い、5Kbのインサ-トを持つクロ-ンを得た。現在詳細を検討している。
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