研究概要 |
老化など経時的変化によって生じる細胞内損傷蛋白質の修復機能研究は細胞生物学分野において重要のみならず、急速に高齢化社会を迎えつつある我が国の高齢者の健康維持という面からもその基礎的研究として重要なものと考えられる。我々は蛋白質カルボキシメチル化反応を中心に老化損傷蛋白質修復機構を研究してきたが、本反応の中心をなす蛋白質カルボキシメチル基転移酵素(PCM)については不明な点が多かった。今回我々は本酵素cDNAを得て、その構造を明らかにすると共にPCM遺伝子についても成果を得ることができた。以下にその要点を記した。 1.ラット脳cDNAライブラリ-より2種のクロ-ン(0.8kb、1.6kb)を得た。 2.両者の全塩基配列を決定し比較したところ、短鎖の配列は長鎖の一部に完全に一致した。翻訳領域は227個のアミノ酸からなり、分子量24,600の蛋白質をコ-ドすることが分かった。 3.このcDNA翻訳領域をプロ-ブとしてRNAブロット解析を行うと3.4kb、2.0kb、1.3kb、の3種が観察された。一方3′側非翻訳領域をプロ-ブとした場合2.0kbのバンドしか認められなかった。これはcDNAストップコドン下流250b付近にあるボリA類以配列が転写を終結させるよう働き、1.3kb RNAが生成するものと考えられる。しかし、3.4kbの長鎖RNAの性質については現在まだ不明である。 4.遺伝子DNAブロット解析の結果、本PCM遺伝子は単一であろうと考えられた。 5.遺伝子ライブラリ-をスクリ-ニングして2種のクロ-ンを得、解析の結果5個のエクソンを確認できたが、cDNAの5′、3′両端に相当するエクソンは見つかっていない。しかし既にこの領域を持つと思われるクロ-ンは得ているので、PCM遺伝子全構造の解析も遠くない時期に可能と思われる。
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