ミエロペルオキシダ-ゼは多形核白血球の殺菌作用に関与している。この酵素は多形核白血球の分化の初期に特異的に合成され、分化の後期で合成が停止する。本研究の目的はミエロペルオキシダ-ゼ遺伝子の転写調節領域を明らかにすることである。本年度はまずヒトミエロペルオキシダ-ゼ遺伝子クロ-ンλMPO18を制御酵素で消化し、転写開始点を含む約2Kbpの遺伝子上流域断片cを分離した。この断片をプロモ-タ-依存性発現ベクタ-(アセチ-ルクロランフェニコ-ルトランスフェラ-ゼ(CAT)遺伝子ベクタ-)に挿入し、組み換えプラスミッドを得た。このプラスミッドをHLー60細胞(ミエロペルオキシダ-ゼを発現している)に導入し、CAT活性を測定し、プロモ-タ-活性を解析した。導入に先立ち、pSV2CATを用いHLー60細胞への遺伝子導入方法を検討した。通常のリン酸カルシウム法やDEAEーデキストラン法は全く無効であった。電気穿孔法により初めて導入が可能であた。しかし、導入効率は低く、再現性に乏しく、今度さらに詳しい導入法の検討が必要である。この方法により、上流域断片Cにはプロモ-タ-活性は見出されなかった。今後強力なエンハンサ-の存在下のプロモ-タ-の解析は必要である。一方、断片Cをエンハンサ-依存性発見ベクタ-(SV40初期プロモ-タ-CAT遺伝子)に挿入し、組み換えプラスミッドを得た。これをHLー60細胞に導入し、CAT活性により、エンハンサ-を解析したところ、断片Cに弱いエンハンサ-活性を見出した。この断片をさらに小さい断片に分割し、現在、エンハンサ-領域の同定を行っている。
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